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東洋医学的治療(総論)

【上焦】

心臓循環器・肺呼吸器系疾患

心臓・循環器





























肺・呼吸器




咳・喘息(旧ホームページ)





心臓循環器、肺呼吸器の疾患症状の東洋医学的診方




心臓・循環器の疾患症状の東洋医学的診方


東洋医学での心蔵は、君主の官で、神を蔵し血脈をつかさどるとされます。

■ 君主の官とは臓器のなかで最も重要な臓器であることを君主が居る宮殿にたとえたわけです。

■ 神を蔵すとは、精神性、精神的機能を心蔵が宿していると考えます。種々の心理的・精神的刺激や興奮により心臓の拍動が変化することから考えられたのでしょう。そのため、不眠などは心蔵の症状として治療します。つまり、心臓を栄養する血液の不足や熱の影響などで心蔵に宿る神(精神)が安らかな状態を失ってしまうため眠れなくなると考えるのです。熱の影響を心が受けると、不眠または、眠りが浅く夢を多く見るなどとなります。熱を除き心神の安定を図ると熟睡できます。
また、喜怒哀楽などの感情のうち「喜」は心に属します。心臓の病では「よく笑う」《霊枢、本神篇第八「心気実則笑不休」心気が実すると笑いて休まずなどの傾向があるとされます。当院でも不整脈で受診している患者さんはよく笑う傾向が見られるように思います。
また、「鬱」では、心の虚証霊枢、本神篇第八「神傷則恐懼」心神が傷つくと恐れ不安な気持ちになり、「心気虚則悲」心気が虚すと悲しい気持ちに支配されるとされることから、心気の不足が関係すると考えることもできます。十分な症例数がありませんが、心気、心血を補うように治療していると、周期的に「鬱」傾向が出る人が安定して陽気な状態を続けることができたりします。

■ 血脈をつかさどるとは、血液と血管系を心が監督管理していると言う意味です。血液の流れは心気の働き(拍動)で推進されています。徐脈や徐脈系の不整脈の治療では、心気を補います。すると、1分間に40〜48ほどだった脈拍数が、60〜66と正常範囲に改善されたりします。
また、血脈は心がつかさどると言いましても、血液が血管から漏れ出ないようにする働きは脾蔵が、血液の生成には脾胃の働きと肺の気化作用が係わり、血液量の調整には肝(肝は血を蔵す)が係わなど、心以外の臓器と関係しています。


心包(絡)しんぽう(らく)の存在。高熱で「うわ言を言う」などの症状も、熱に心神が影響されたものと考えすが、心神が直接傷つき敗れることは生命の危機、「神敗れれば死す」ことになりかねません。そこで心蔵の外衛として心包(絡)を置いています。この心包(絡)は、心臓を覆う心嚢や冠状動脈とも解されますが、熱邪などの襲来は心包(絡)が受け心神を守るとされます。高熱による「うわ言」や「精神錯乱」「発狂」などは「熱入心包」と言って、熱が心包(絡)へ入った症状とされます。
また、この心包(絡)の存在は、五つしかない臓器、五臓と手足の三陰三陽の経絡とを対応させるものにもなっています。臓器が五つと言うのは、五臓六腑と言いますが、東洋医学では中が実質のものを「蔵」とし陰に分類し、胃や腸、膀胱のように中が中空のもを「腑」とし陽に分類します。経脈は手と足にそれぞれ三つづつの陰の経脈と陽の経脈があります。陰の経脈は蔵に、陽の経脈は腑にそれぞれ属しますから、陰の経脈では足の三陰と手の三陰の合計六に対して五臓では一つ足りません。心包(絡)と言う蔵があってよかった・・・と言うことになります。

その他、心に関係するものとして
心の栄華は面にあり・・・心気の状態が良ければ「顔面の色艶」も良いことになります。診察では、先ず望診として患者さんの顔色を見て「神気を見る」ことから始まります。明るく艶がある人は健康を回復しやすいものです。
舌に開竅する・・・舌は味覚をつかさどりますが、「心和すれば舌よく五味を知る」と言われ、心気が良好であれば味覚も正常に機能します。味覚障害は心気の変調と見ます。また、舌に口内炎ができるなどは心に熱が影響していると見ることができます。
五行では、心は火に属します。心包も火に属しますが、心を君火、心包を相火とします。
熱を嫌う・・・五行分類では、心自体が火の性質になります。人体は陰陽のバランスの上に成り立っていますが、心など蔵自体もそれぞれの中で陰気陽気のバランスを取って成り立っています。火の性質がある心にさらに火熱が加われば、陰が不足し陽が過剰となりやすく、心神の安寧が脅かされます。



資料参照





肺・呼吸器の疾患症状の東洋医学的診方

東洋医学での肺は、「相傳(伝)の官、治節これより出でる」と〈素問・霊欄秘典論〉に記載されます。これは「君主の官」のに対して、それ(君主)を補佐する役割が肺にあると言う意味です。
また、肺は気をつかさどるとされます。これは、空気を肺に吸い込み酸素を取り込む肺の働きそのものを意味しますが、それ以上に、人体の生命活動を維持する基本的要素としての「気」を肺がコントロールしているということが重要です。〈霊枢・五臓生成篇〉では「諸気はみな肺に属する」と言います。

その他、肺は「皮毛に合す」、「一身の表をつかさどる」、「行水をつかさどる」とされます。
皮毛に合すとは、次の一身の表をつかさどるとともに、肺が体表皮膚を管理し、発汗して体温を下げたり、逆に体表を引き締めて体温を保持したりする働きをしていることを言います。

行水をつかさどると言うのも、肺気が体表ならびに全身の臓器に気を行き渡らせると同時に、水分を行き渡らせる作用があります。また、肺気は粛降(しゅくこう)作用といって下降する性質をもちます。そして、肺は君主(心)の華蓋(飾りを施した傘)にたとえられ体幹部臓器のもっとも上にあって、他の水の運行に係わる脾蔵や腎臓との関係で水の上源にあたります。水は肺と言う水の上源から、肺の粛降(下降性の気の作用)を受けて運ばれ、最終的には膀胱へ達し小便となるとされます。
また、肺が華蓋にたとえられるのは、肺が最上部で心ならびに他の内臓の上を覆い、肺がつかさどる皮毛も体の外表を覆い、それぞれ外邪から守る働きをするためでもあります。

その他、肺に関するものとして
肺は鼻に開竅(開孔)する、または、肺気は鼻に通ずる・・・とされ、鼻炎など鼻の症状も肺気の変調によります。肺気が良好であれば鼻は臭気を正しく嗅ぎ分けられます。鼻づまりは肺気がスムースに流れない(肺気不宣:肺気が行き渡らない)状態です。鼻水衛気不固と言って肺気が邪に侵され鼻粘膜表面をしっかり固めることができない状態です。また、声が出ないなども肺の症状と見ます。

呼吸器の症状と言えば、代表はでしょう。肺気は粛降すなわち、下降する性質です。咳は、これが逆に上へ向かいます。肺気上逆とか逆気が咳の病理現象です。

《素問宣明五気篇》では、肺は寒を嫌う・・・とあります。寒が直接肺に入ったり、肺のつかさどる体表に取り付いたりして種々の病状を起こします。冬の寒い時期に、カゼやインフルエンザ、喘息の発作など呼吸器の病気が起きやすいことからもうなずけます。
しかし、肺は嬌蔵(きょうぞう=きゃしゃで弱い臓器)とも言われ、寒以外にの病邪も受けやすい蔵なのです。肺がつかさどる皮膚は直接外界に接し、気道粘膜や肺も吸い込んだ外気に直接接するからです。五行では、肺はに属します。火克金といって、寒以上に火(熱)の方が肺(金)にとっては手ごわい邪と言うこともできます。

治療は、主症状の他、問診や脈診、舌診などから診断した上で、肺経のみならず表裏関係の手の陽明大腸経や、足の陽明胃経、足の太陰脾経、足の少陰腎経などのツボから選びます。

たとえば、鼻の症状や皮膚の症状の治療では、肺経と表裏の関係にある手の陽明大腸経のツボ(合谷や曲池など)を使います。皮膚炎や湿疹、蕁麻疹などアレルギーや炎症性のものでは、曲池とともに、舌診を参考に足の太陰脾経のツボ三陰交を寫します。
では肺経のツボ尺沢を、がともなえば足の陽明胃経のツボ豊隆を加え、が盛んならば熱を除く手技操作を加えるか、同経ツボの内庭を加え寫します。痰発生の原因が脾の虚証にあれば痰や水湿を除くとともに脾気を補います。
息切れや息苦しいなどでは、肺とともに納気をつかさどる腎との係わりを診て治療します。


資料参照