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整形外科的疾患症状の鍼灸治療(総論)



整形外科的疾患症状









整形外科的疾患症状の鍼灸治療(総論)

整形外科的疾患症状も2つの治療を組み合わせます。

A.鍼灸治療の基本としての東洋医学的対応の重要性

B.神経解剖学的鍼治療


鍼灸治療で治療対象となる整形外科的疾患症状は、骨折などの手術を必要とするものを除外した、いわゆる身体痛、首から下の痛みや凝り、しびれなどが対象となります。筋肉痛、筋疲労、筋痙攣、麻痺、肉離れ(筋断裂)、関節炎、関節痛、関節周囲の軟部組織の病症、靭帯損傷、捻挫、腱不全断裂、腱鞘炎、神経痛、神経炎、しびれなど感覚知覚異常などです。
◇代表的症候名では、いわゆる「腰痛症」「ギックリ腰」「大腿神経痛」「坐骨神経痛」「肋間神経痛」「五十肩」「四十肩」「肩関節周囲炎」「膝関節痛(炎)」「変形性膝関節症」「頚肩腕症候群・胸郭出口症候群」「頚椎症性神経根症」「頚椎捻挫」などです。(個別疾患症候については ≪鍼灸で良くなる病気症状の検索≫ をご参照ください。)

A.鍼灸治療の基本としての東洋医学的対応の重要性

 腰痛や肩こり、五十肩、膝関節痛などなど、整形外科的疾患でハリ治療にかかる患者さんは多いようです。と言うより、これらの痛みの治療こそ鍼灸治療の出番とも言えます。
・・・・ただ、残念なことに、腰が痛ければ腰に、肩が痛ければ肩にと言う、痛いところにハリを打つだけの治療がはり治療だと思われてしまっている・・・患者さんからも、東洋医学の専門家であるはずの鍼灸師のなかにそう思い込んでいるの、それしか出来ないのか・・・痛いところにハリを刺すだけの治療をしています。
先日、以前当院にかかったことがあると言う方が遠く鎌倉から受診されましたが「何軒鍼灸院にっかかってココ(当院)のように脈を診たり舌を見たりするところはない」と言っていました。
しかし、脈診舌診などからの診断をもとに治療すると格段に違う治療効果に結びつきます。
◆たとえば、舌の色が赤紫の場合、患者には炎症症状が強い場合があり、痛みは強く「じっとしていてもうづくように痛い」ことがあります。この炎症を鎮めるようツボを選び鍼の操作(手技)を選びます。うづくような痛みは消えて行きます。痛む場所が首から肩〜腕であっても、足の方のツボの鍼で楽になって行きます。
◆たとえば、舌が赤く乾いて、舌苔(ベロのコケ)が少なく、脈が細く速い(現代医学的には「頻脈」、中医学では「数脈〈さくみゃく〉」と言います)場合、陰虚証による症状です。このタイプは加齢的な症状で筋肉の衰えや関節の滑らかな動きが低下したりします。これが顕著にあらわれるのが肩関節や膝関節です。五十肩や膝関節症の患者さんのなかには陰虚証の治療で足首の近くのツボ「復溜〈ふくりゅう〉」に鍼し陰を補う手技操作を加え、細く速かった脈の状態がやや太くゆったり拍動するようになり、舌の赤味が淡紅色に乾いた口がサラサラした唾液で潤ってくると、肩や膝の関節局所の治療をしないうちに楽になってしまうことがあります。
◆とくに、肩こりなどでは、首や肩の筋肉の凝りを先ず見て起きます。脈診と舌診から主に手足の先の方のツボを使って陰陽虚実を調整します。脈状、舌象が良好に変化したところで、先ほどの首と肩の凝りを見てみます。ほとんどの患者さんが「軽くなった」と言います。
◆このほか、東洋医学的ハリ治療の特徴として、痛みの種類性質に合わせて治療することがあげられます。舌診でコケ(舌苔)がベタついているなどでは、患者は「重だるい痛み」を訴えます。湿邪と言って湿り気が症状を悪化しています。この湿邪を取り除くことを治療の目標とします。また、こんな経験もあります。東洋医学的対応と神経解剖学的側面からの治療も済ませて消えてもいいはずの痛みがどうやっても引きませんでした。すると患者さんは「ヒリヒリ痛むんだ」と言います。刺鍼に「透天涼(とうてんりょう)」と言う熱を取り除く手技操作を加えてみると、あっという間に患者さんは「あ〜ァ、楽になりました」と言います。ヒリヒリ痛いと言うのは熱が原因しているからだと判断したことが良い結果に結びつきました。熱を除く手技「透天涼」も知らなくてはならないことは言うまでもありません。
◇また、この脈診や舌診を基にした治療の効果は、肩や膝などの症状部位のみにとどまらず、脳や内臓、全身に及ぶものです。当院の治療の後は、症状のみならず「頭がすっきりした」とか「眼が明るくなった」とか「胃がすっきりして食欲が出た」などなど・・・プラスαの効果があります。痛み症状に対しても、痛いところへハリ打つだけの治療よりも数段上の治療効果が期待できます。



B.神経解剖学的鍼治療

せきついそくししんほう 
脊椎側刺鍼法
痛みは知覚神経の興奮、凝りは運動神経の興奮と見れば、運動・知覚、両方の神経の興奮を鎮静すれば痛みも凝りも消えることになります。また、主訴が、関節痛(関節炎)であっても、その関節を動かす筋肉の緊張(凝りや突っ張り)を取り除くと血流の改善とともに痛みや腫れも引きやすくなります。
それでは、神経の興奮を鎮静させるにはどこへ鍼を打ったらよいでしょうか。

神経解剖学的鍼灸治療の方法としては、私が以前発表した『脊椎側刺鍼法』「即効性の高い治療への試み」鍼灸業界月刊誌【医道の日本】へ平成18年2月から7回連載発表が最高の治療方法です。

この『脊椎側刺鍼法』は、患部周囲の筋緊張亢進(凝り)を刺鍼する脊椎の高さを決める診断方法とし、脊椎側の神経根付近へ刺鍼することによりその筋緊張亢進が緩解するのを確認することで刺鍼効果の確実性を高めると言うものです。

『脊椎側刺鍼法』は、
  1. 頚神経を対象とした・・・・・・・・・「頚椎側刺鍼法」
  2. 胸神経を対象とした・・・・・・・・・「胸椎側刺鍼法」
  3. 腰・仙骨神経を対象とした・・・・「腰椎側刺鍼法」
  ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー以上の3つに大別します。

*3つに大別する理由:脊椎側刺鍼法では、体表から触れて分かる椎骨(首から腰までの背骨)の出っ張りを基準点にして深部に位置する神経根部へ刺鍼します。しかし、椎骨の形状の相違により単純には決められないためです。


頚神経
  頚椎側刺鍼・・・・・頸肩腕部(首・肩・腕)の症状の治療
   ≪ 参 照 ≫
  頚椎側刺鍼法頚部の神経解剖学的側面からの刺鍼法


胸神経

  胸椎側刺鍼・・・・・背部・胸腹部の症状の治療

背部は胸神経後枝、胸腹部は胸神経前枝(肋間神経)です。


(1)胸神経後枝は背骨(胸椎)の両側の筋(自所的筋群と言います)に分布する
  神経です。
  

(2)胸神経前枝(肋間神経)では、胸椎から出た神経は肋骨の間(正確には肋骨
  の下)をぐるりと胸腹部の中央まで行きます。

乳首の高さで ・・・・・・・・・・・・・・・・・第 5 肋間神経
鳩尾(みぞおち)の付近は・・・・・・・・第 7 肋間神経
お臍の高さでは・・・・・・・・・・・・・・・・第10肋間神経
重要なのは下腹部が・・・・・・・・・・・第11・12肋間神経の分布域だと言うことです

(3)側胸部(側胸点)で圧痛を診る

肋間神経では痛みの出ている肋間神経の高さを判断し側胸部で下(第12、11肋骨端)
から肋間を数え上げて行きながら圧痛を確認します。
また、後枝域の自所的筋群の張りや痛みでも側胸点の圧痛があれば胸椎側刺鍼法を用
います。

(4)胸椎側刺鍼法の刺鍼点の決め方

胸椎下位の第10、11、12胸椎棘突起では、腰椎の棘突起と同じでほぼ垂直に後方へ
立ちあがっているため神経根への刺鍼は腰椎側刺鍼法と同じ方法となります。
下位胸椎では棘突起を基準に位置を決めることができますが、第1〜9胸椎では棘突起
の長さ角度が各椎ごとに異なるため棘突起を基準に求めることはできません。
この第1〜9胸椎で神経根への刺鍼の基準となるのは横突起です。横突起は背面で
各肋骨を内方へ触診して行くと脊柱起立筋の胸最長筋の太い筋腹に触れ肋骨が触れ難
くなるところです。肋骨を触診して胸最長筋に隠れるところが肋骨と横突起の関節部で胸
最長筋は胸椎横突起に停止していますから、肋骨を触診して内側に最後に筋の下に触れ
骨が横突起となります。
刺鍼点はこの横突起の直下ですが、安全(気胸事故防止)のため10mmほど内側に取り
ます。

(4)胸椎側刺鍼法(第1〜9胸神経前枝肋間神経)の刺入方向

胸椎横突起は上位第1胸椎では約60度の角度をもって外へ開き下位へ行くにしたがって
角度が小さく立って行きます。したがって横突起直下の内方10mmから60度内側へ傾け
れば安全な刺鍼となるわけです。下図右上で分かるように横突起直下の高さは椎間孔を
形成する下椎切痕と一致しいていますので、鍼は容易に且つ安全に神経根の近くへ到達
します。



腰神経

腰椎側刺鍼・・・・・腰部・臀部下肢の症状の治療

腰神経は腰部、大腿前・内側部で、臀部、大腿後側、下腿部、足部は仙骨神経です。

   ≪ 参 照 ≫
   腰下肢の痛み・・・[B] 腰下肢の痛みの神経解剖学的鍼治療