患者(60代女性)は、『胃が痛い』と背中を丸め上半身をかがめるようにして来院しました。
以前から健康診断で「びらん性胃炎」を指摘されている方です。
胃痛と同時に……右脇腹から背中にかけて痛いと、再発を繰り返している肋間神経痛の症状もあるようです。
胃痛は、足陽明胃経を主導とした経脈を介した伝統医学の治療法で治まりました。上腹部の胃の辺りを深く押し込んでも『痛くない』と言うほどまでものの数分の内に改善しますから、伝統医学としての鍼治療の即効性はたいしたものです。
さて、肋間神経痛は…、
まず、どこの肋間神経が痛いのか? 第12肋骨の端から順に圧痛を確認していきます。右側の第12肋間神経とその上の第11肋間神経に痛みがあるようです。この2つの肋間神経は脇腹から下腹部へ分布します。胃のある上腹部は、第10肋間神経がお臍ヘソの高さですから、第8か第7の肋間神経が体表で分布していることになりますが、肋間神経の圧痛を診る惻胸部(惻胸点)では、これらの神経に圧痛はありません。
第12肋間神経痛の鍼治療は伝統医学的鍼治療から神経解剖学的観点からの鍼治療になります。
私が「医道の日本」誌に…もう20年ほど前になるでしょうか?…発表した「脊椎側刺鍼法」の内の「胸椎側刺鍼法」を用い刺鍼します。効きます。即効的に効きます。
刺鍼途中には、最初診た右第12肋骨端の圧痛の軽減〜消失を確認し、鍼を抜いた後は、脊椎側の深部圧痛の軽減〜消失を確認します。どちらも、無くなっています。
患者は『楽になりました』とホットしたようすです。
第12肋間神経の元は、第12胸椎にあります。この肋間神経は下腹部の一番下の辺りへ分布していて、この肋間神経自体は胃痛と直接つながっている訳ではありません。
伝統医学としたの鍼灸のツボで背中にある「背部兪穴」の配置を見ると、ちょうど胃のツボ「胃兪イユ」が第12胸椎の外方に位置します。
一方、神経的に胃を支配してくるのは「自律神経」です。この自律神経は副交感神経と交感神経に分けられることはご承知の通りですね。そのうち副交感神経は頭仙系と言って頭部(中脳・延髄)と仙椎(仙髄)から出ていますが、交感神経は胸腰系と言い胸椎(胸髄)と腰椎(腰髄)から出ています。
背中の痛みや肋間神経痛が起こる場合、肋間神経が胸椎の脊椎神経孔から出てくる周辺に小さな炎症があり(主に椎間関節付近)横突起や関節突起に付着する小さな筋に硬結を生じたりして…、神経の圧迫や牽引が起こり肋間神経痛を発症するものと思われるます。
ここでの痛み刺激は、即…交感神経に反映投射され、交感神経の緊張により分布域の血管収縮が起こります。すると、胃腸をはじめ全ての内臓の血流が不足します。
胃では、血流不足によりムチンなどの胃壁を保護する機能が低下しますが、食物摂取により胃酸は分泌されますため、自らの胃酸により胃炎は進行することになります。
交感神経緊張により多くの臓腑が機能低下するなか、先ず胃痛が発症することになります。
なお、第11肋間神経の圧痛が第12肋間神経の鎮静に伴い消失したため…第11胸椎側の刺鍼は行いませんでした。

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