肩凝り(頚肩部の痛みや凝り)の鍼治療

たかが、肩凝り・・・の鍼治療 _ _ _ とお思いでしょうか?
これをどう治療するか・・・鍼灸師の技量の差が現れます。

肩凝りで気になるところは、左図のように

  • 「項部:頭半棘筋」
  • 「肩上部:僧帽筋」
  • 「肩甲骨の角:肩甲挙筋」

・・・・・・・・・・・・・・・・・この3ヶ所でしょう。
これを鍼治療するのですから、診療ベッドに腹臥位(下向き)に寝て・・・この3つの凝った筋に鍼を打つ(刺す)・・・
これが鍼治療だと思ってしまってもしかたありません。実際にこのようなことをしている鍼灸師もたくさんいるようです。
***が、これは伝統的鍼灸医学の「鍼治療」ではありません。凝った筋肉に鍼を打つ(刺す)だけなら3年も勉強して資格試験を受ける必要はありませんね!

当院の肩凝りの鍼治療は、凝った筋に刺鍼することはあまりありません。ほとんどの場合、腹臥位にもなりません。仰臥位(上向き)でないと伝統的鍼灸医学の診察「脈診」「舌診」「腹診」などができませんし、治療過程での顔色の変化や「舌診」や「腹診」の変化改善も確認できません[ 当院の鍼治療の特徴 ]のページで説明しましたように*鍼治療は経脈の循環をよくして症状や病気を治療する医学・医術です。
 まずやるべきことは*経脈の気の流れを阻害している原因の除去です。そして、滞った経脈の気の流れを促進させれば、筋の凝りは自然に緩解します。

緩解しきれず凝りが残る場合、「頚椎側刺鍼法」を用います。

この治療方法は、多くの病症に当てはめることができます。
このかたちの鍼治療で適応する病症名は以下のとおりです。
{・頭痛・眼の奥が痛い重い・物が二重にに見える「両眼複視」・視力低下・顔面神経麻痺・三叉神経痛・顎関節症・歯痛歯が浮く・鼻炎花粉症・美顔・寝違え・頚椎症性神経根症・斜角筋症候群・四十肩五十肩肩関節周囲炎・上肢から手の諸症状など}

❏ 頭痛や眼の奥が痛い重い、物が二重に見える「両眼複視」
・・・を例に説明してみましょう。小田原さん(小田原市在住70代女性)は、一週間前から「ものが二重に見え」病院へ行きましたが検査しても特に原因が見つからず「治療法がない」と言われました。孫娘がネット検索して当院ホームページで「複視が鍼治療で治る」と言うこと知ったそうです。小田原から当院までかなり遠いため、市内の鍼灸院を探し電話で問い合わせると何軒電話しても『複視の治し方は解らない』と言われ・・・遠いけれど当院へお越しになりました。

 原因不明の複視の場合(原因疾患が解っている場合にも共通しますが)、眼球を動かす外眼筋の血流を改善することが治療となります。「当院の鍼治療の特徴」のページで説明しましたとおり、経脈の気の流れを良好にすることは「全身の末梢循環」を旺盛・活発にします。眼には全ての陽の経脈が出入りしています。眼の動きの悪い方向に関係が強い経脈を特に疎通させるようにします。
また、「頚椎側刺鍼法」も重要です。特に第2第3の頚神経は頭痛や眼の奥の重い痛みに強く関係します。別の患者さん(台東さん:東京都台東区在住60代男性)の例では、右側の第2、第3頚椎椎間関節付近に痛みが出ると右眼の奥が痛くなり、その後複視を発症し、この第2、第3頚椎椎間関節付近の痛みを頚椎側刺鍼法にて取り除くと眼の奥の痛みが消え、複視も改善して行く・・・と言う経過をたどり治癒しました。
頭痛は第2頚神経の枝が大後頭神経や小後頭神経、後耳介神経になり、第3頚神経からも後頭部へ第三後頭神経が出ますから、第2、第3の頚椎側刺鍼で治ることは直ぐに解りますが、頭痛でもコメカミが痛いとか額や前頭部が重いとか、眼の奥が重い痛いとなると脳神経の三叉神経神経の支配で頚とは関係ないのでは・・・と思われるかも知れませんね。
まず、額や前頭部の重い・・・と言う症状は手足の陽明経脈の運用で消えます。これに「湿邪」を除去する処方を加えれば完璧になくなります。コメカミあたりも軽減するはずです。
頚椎の触診をし第2、第3、(場合によっては第4以下も)頚椎側の圧痛を確認し刺鍼にて除去しますが、ここの圧痛点を強く長く押圧するとコメカミや眼の奥に重苦しい圧迫感を感じることがあります。これは第2、第3、の頚神経の知覚刺激が脳神経の三叉神経領域へ投射されているものです。なぜこの投射が起こるかと言うと、脳神経の三叉神経は「三叉神経脊髄路」と言って脳から脊髄へ下りて来ています。そして各脊髄段区の知覚神経の集まる後角付近「三叉神経脊髄路核」と言う連絡所を設けています。ここが経緯神経の痛み知覚に反応して眼の奥へ投射するのだと思います。常態的な軽微な痛みの情報は脳の伝達の途中でゲートコントロールされ意識に上がらないことになりますが、眼の周辺では交感神経の緊張を招き血行不良がつづくのでしょう。その結果外眼筋の疲労状態がつづくこととなり眼精疲労的に複視を発症させるものと考えます。これが、原因不明の複視正体です。
血流が改善されれば治りますから、鍼治療が最も適することになります。
発症から一週間と早めに当院へ来られた小田原さんは、初診時第1回目治療で治ってしまいました。
発症から1週間では、5~7回ぐらいの治療回数で治ることが多く、発症から1ヶ月経過すると25~28回の治療回数を要することになります。
症候性に複視を発症した場合では、聞いたこともないような病名「トロサハント症候群」とか「フィシャー症候群(ギランバレー症候群の軽いもの)」などに罹患し、炎症による眼窩の圧迫で複視となり、ステロイドなど薬物療法で原因疾患は治癒したものの複視症状が残り当院を受診され複視が治癒した例などがあります。外眼筋の血流改善が治癒を早めます。
原疾患が治らないもの、たとえば、「甲状腺性眼症」の場合でも一過性に複視症状が軽減することありますが、外眼筋の炎症から線維化してまう病気ですので予後不良でしす。
また、重症筋無力症眼筋型など主な治療はステロイドなど投薬になりますが、『薬を飲み忘れ複視症状が強くなった』と来院された方で鍼治療を施すと、一時的ではあるものの複視が完全に無くなり1つに一致して視えるように変わります。この患者さんは、重症筋無力症診断確定前から当院で治療していた方でしたが、毎回、鍼治療の直後は複視が軽減していました。基本的に主となる治療は薬物療法になります。