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東洋医学的治療各論:

心蔵循環器の鍼灸治療///////////////////////////////


心は神を蔵し血脈をつかさどる黄帝内経素問、宣明五気篇

当院の鍼治療では、脈診を行い脈状(脈拍動の状態)を整えます。脈拍動は自律神経によってコントロールされているのですから、当院の治療は自律神経を調整していることになります。
そして、「血脈は心がこれをつかさどる」と黄帝内経に書かれていますが、《素問、宣明五気篇》には「心は神を蔵し、心は脉をつかさどる。」と脈をつかさどる前に、先ず、「神」(=脳の精神機能)を心臓が担っていると原典では言います。鍼治療の効果を理解すると納得できるようになります。不整脈(心不全)で心臓から送り出される血液量(血圧)が低下すると、高いところにある頭・脳の血流は不足し、脳虚血の症状が出ます。卒倒して意識が飛んで倒れる場合もありますが、前頭葉運動野の虚血では足の動きが思うように行かず小刻みな歩行になるなどの症状が現れます。鍼治療で心拍動が回復し、脳の血流・酸素供給が戻ると症状はなくなります。


動悸、不整脈、心房細動

動悸のことを「心悸」と言います。心臓の鼓動が高ぶり心臓部に不安感を覚える症状です。激しいものを「セイチュウ」(Wordで漢字変換できませんがセイはリッシンベンに正、チュウは同じくリッシンベンに中です)と言います。「心悸」は機能的な病変で「セイチュウ」は動脈硬化による冠状動脈の狭窄など何かしらの器質的病変がある場合・・・などと言われます。
発症の原因は、精神的要因や心血不足、心陽虚、腎陰虚損、水飲内停、汚血、虚火などによって起こります。


1)心気虚

心気内虚があると精神的要因、驚きや恐怖、不安などから動悸を起こしやすくなる。

症状:動悸・短気(息切れ)が労作時強く、胸苦しく不快、自汗、脈は細弱結代、心拍のリズムが乱れている。精神衰弱が見られる。

治療:神門、心兪に補。

*肺気不足のものには合谷、または、太淵に補を、腎気虚では太谿、または、気海に補を加えます。
*気虚にともなう血行不良で汚血のある場合は、三陰交、内関に寫を加えます。

2)心血不足

症状:心悸、心煩の他、顔面蒼白で、頭がくらくらし、不眠で夢を多く見る、健忘、神経過敏、貧血、虚弱体質など。脈は細弱で、舌質の血色が淡い。

治療:三陰交、神門補。*血虚を招く原因により他の配穴を加えることがあります。

3)心陽虚

心気虚の進んだもので寒症(冷え)がともなう。心陽不振とも言う。

症状:心悸がひどくなる(脈拍少なく、遅=徐脈で、弱い)など心気虚の症状が重症化する他、四肢の冷え、大汗、最悪の場合、意識障害、心力衰竭(ケツ=尽きる意)となり、脈は微で今にも絶えんばかりとなる。

治療:神門補、心兪補加灸。*飲邪上逆し、水が心火に影響しての心陽虚には陰陵泉寫を配す。*腎陽虚をともなう場合、太谿補、関元、または腎愈灸。5)水飲内停(下述・参照)

4)腎陰虚損

五行属性では火、は水ですが、生理機能上、心陽と腎陰は互いにバランスを取り合っています。この相互の協調関係が断たれることを心腎不交と言い、腎陰の虚損により心腎不交が起きます。すると、水による冷却機能が失われたエンジンがオバーヒートするように、心火擾(ジョウ=乱れる意)動が起こり、心悸、心煩、不眠、多夢などを発症します。

症状:心悸など心の症状の他、腎陰虚の症状(参照:各臓腑の虚症)をともないます。脈象

治療:*心火擾動の症状が激しければ、神門、心兪を寫して、後に、復溜を補います。 *心蔵の症状が落ち着いていれば、復溜、神門を補い、心兪を寫します。この場合、灸を加えてはいけません。

5)水飲内停 ⇒ 3)心陽虚 (上述・参照)

水飲内停は、飲食の不摂生や脾陽虚により胃内停水や浮腫、身体が重だるい、頭重感、などを伴います。心と脾は、心火と脾土の相性(母子)関係にあり、どちらの陽気が損なわれても互いの陽虚増悪する可能性があります。 

鍼灸治療的には、元陽と言われる腎の命門の火の状態をみることが重要で、余剰となっている水飲水湿を除き、腎陽脾陽補います。心火は子の脾土を養育する立場にありますが、脾陽が盛り返すことにより子を養育する負担が減り自身の陽気の損傷を回復し易くなります。背部兪穴の心兪(第5胸椎棘突起下の外方1寸5分)に陥凹があれば「窪かなるには灸す」の≪霊枢・経脈篇≫の治療原則どおり、陥凹は虚ですので灸にて温補します。 

6)汚血(汚血内阻、または、心血内阻)

症状:胸が重苦しく不快、ひどいときには、発作性に痛み呼吸逼(ヒツ)迫し喘(アエ)ぐ、舌質は暗紫、または、暗青紫色、暗赤紫色。または、汚班。《参照:用語説明ー1ー「汚血」》 

治療:大陵、三陰交寫

*気虚の場合にも舌質に同様の色汚班が認められれば同配穴を加える。気虚のため血液の推動力が低下すると、血液の停滞が起き汚血を発生させるためです。

7)虚火 ⇒ 4)腎陰虚損(上述・参照)

症状:《参照:用語説明ー1ー「虚火」

治療:ー ー ー ー ー ー ー ー ー ー

8)動悸の発症から間がな新病で体力・体質良好なものの場合

症状:急な精神的ストレスやショックで発症した動悸のみ

治療:神門、大陵を寫します。



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■ 不整脈


◆徐脈系のもの

徐脈は、脈診では遅脈と言い、冷えや寒邪の存在を意味しますが、これは陽気の不足=陽虚として治療します。神門(補)心兪(補加灸)。腎陽虚があれば太谿(補)、関元または腎愈(補加灸)


◆頻脈系のもの

頻脈は、脈診では数脈と言い熱の存在を意味します。

◇脈が強く触れれ実熱で何らかの熱性の原因があります。特に滑脈と言ってなめらか感触で強い場合、痰熱が心に影響しています。豊隆(瀉加透天涼)、熱の程度が強ければ内庭(寫加透天涼)を加えます。神門または大陵、内関、などかから適宜選穴し寫法を加えます。脾虚があれば陰陵泉を寫した後補います。

◇脈が速い(頻脈、数脈)が、細く弱い場合、陰虚内熱、火旺のためです。舌質は赤く、少津少苔、ときにひび割れて裂紋が見られます。舌質本体の形が痩せて尖っている、または薄い傾向にあります。復溜または太谿を補います。腎陰、腎精の不足が補われるだけで改善する場合もあります。神門(補)を加え心陰も補います。また、この神門(補)は脈の拍動力が弱いのも改善することになります。脈の拍動力が弱いままであれば、六部定位脈診で左右の寸口


◆心房細動

心房細動も徐脈系のものと、頻脈系のものとがあります。徐脈系のものは比較的安全ですが、頻脈系で脈拍数の多く不規則で触れにくいものは心臓から血液が送り出されず、滞留した血液が固まり血栓症(脳血栓など)を起こす危険があります。循環器主治医の指示に従い薬を正しく服用してください。

◇徐脈系のものは、徐脈を鍼灸医学用語に置き換えると遅脈ですから、冷え=陽虚として治療を考えます。

◇頻脈系のものは、細く速い(細数)脈は陰虚証の特徴ですが、弱く触れにくいのは気虚ですから、陰虚、気虚の陰陽ともに虚した状態と考えます。舌は体が痩せてやや赤い、苔が無いか、少なく乾いています。裂紋と言ってひび割れ様のすじが見られることもあります。



* 心房細動がなくなってる!

 ずいぶん以前の患者さん(当時60代女性)のことです。私が病院勤務時からの患者さんで、独立開業後も体調不良の折には来院されていました。 しばらく来院がなく、電話がありました『怠くて具合悪いので、これから行きますから診ていただけますか』と。 遠方のため、到着は昼過ぎになると言うので待っていると、最寄り駅の『南林間に着きました。これから伺います』と電話が入りました。駅から当院までは4〜5分ですが、20分待っても到着しません。倒れでもしたらと、車で見に行くと駅前ロータリーを出たところを靴のサイズの半分の歩幅でゆっくり歩いて1*いました。20分経って駅から普通の人なら1分の距離でした。車に乗ってもらい院へ戻り治療しました。
脈は細く弱く不規則で、遅脈のように触れるのはたぶん心房細動で血液が心臓から送り出されてないため、脈拍動の間隔が開いているからでしょう。 舌はやや淡く体格に比して小さい。 精血を補い心気を補う治療をすると脈拍は触れやすくなってきました。薄墨のような暗い顔色が明るく変わると患者は『ああ、楽になりました』と言います。
治療を終え別人のように元気に帰って行ったのですが、午後6時半ごろでしたか、患者さんご家族(娘さん)から電話があり『母がまだ帰って来ない』と言います。何処かで倒れたのではと心配しましたが、後日、この患者さんがニコニコしながら言うには、『この前こちらで治療を受けた後、久しぶりに体調良くルンルン気分デパートをウインドウショッピングして帰るのが遅くなった』とのことでした。
かかり付け循環器科での心電図検査では、主治医から『如何した!?心房細動がなくなってる!』と言われたと言います。 鍼治療受けましたと言うと『体に合ってるようだね。続けるといい・・・』と言われたと言うことでした。
 1*この歩行を小刻み歩行といいます。脳梗塞などで起こる症状ですが、この患者さんの場合、両下肢とも動き(歩幅)が狭く、片側性に詰まることが多い脳梗塞とは違い、心臓から送り出される血液が急激に減少(血圧低下)し大脳の前頭葉運動野が虚血状態となったため起きた症状です。鍼治療によって心拍動が正常となり脳の血流が回復したということです。全身性の怠さも心臓からの血流量が少なく充分な酸素供給を受けられないからでした。≪参照≫


心房細動は不変でも体調良くなる!!


□心房細動の患者さんで、心臓の拍動を起こす信号の発信源がある洞結節部の異常興奮を起こ部分を電気的に焼くカテーテルアブレーション手術を5回受けたが当院を受診して来たことがあります。


脈は細く弱く不規則に速く触れにく脈でした。ひどい息切れのため10メートルに一回休まないと歩けないほどでした。陰虚陽虚(または、気陰両虚)として鍼治療して行くうちに、数分間休まず歩けるようになり、次第に10分間続けて歩けるようになり、最終的には、自宅から当院までの30分以上お道のりを休まず歩けるようになりました。
が、しかしながら、心房細動の脈状は不変でした。その患者さんは退職後の方でしたが、現役時代に赴任していたヨーロッパへもう一度旅行したいと言う希望をかなえるべく当院へ通っていたと言うことで、心房細動は不変でも体調良くなりなした。






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