患者(50才代女性)は、今年6月、左手拇指(親指・第1指)末節が痛く整形外科を受診すると『ヘバーデン結節』だと言われた・・・と言います。特に治療も無く湿布が出されただけで帰宅したそうです。
当院受診は、同年8月で他の主訴(背部痛)で来院されました。
6月に発症して2ヶ月経過していますが、左手の拇指末節はやや腫れぼったく関節を両側面から圧迫すると強い痛みがあります。側面から押して痛い場合は関節自体の痛みと考えます。また、関節を手背面と手掌面から圧迫すると背面には痛みがありますが、手掌面は痛くないと言います。これは伸筋腱から伸筋に問題あることが考えられます。
鍼の治療のよいところは観察と治療(施術)が同時進行に行えることです。
上記ような場合、痛み腫れ(炎症)がある指の(指でない関節の場合も同様ですが)関節を動かす筋の硬結・圧痛を取り除くことが治療となります。関節周囲やその付近に停止する腱や腱鞘の循環は、その筋の状態が柔軟で血流がよいときには良好となり、その筋が硬く疲労し血流が悪い状態では不良となります。筋膜や腱鞘に覆われた部位循環不良は関節部の循環・新陳代謝に悪影響を及ぼし、関節付近に起きた炎症の治癒を遅らせます。
その結果、この患者さんは、6月から2ヶ月経っても関節の腫れが引かない状態です。
鍼治療は簡単です。
痛い・腫れた関節を屈伸して動く筋、この患者さんの場合、橈骨の中程の背面側のところを術者の四指腹を当てて動きを診ながら、拇指末節を屈伸し長拇指伸筋または長拇指外転筋を探り、硬結・圧痛を確認し最も硬い部位に刺鍼し「運動刺法」を行います。つまり刺鍼に2分の1回旋の素速い捻り手技を加えながら、拇指末節の屈伸運動をさせる。
みるみる・・・腫れは引き、関節を圧迫しても痛く無くなりました。